米国株市況:2025年8月11日週振返りと次週の展望

市況サマリー

20205年8月第3週振り返り

今週の注目経済指標は7月の消費者物価指数(CPI)。関税によるインフレが予想を上回れば、FRBの利下げ期待に水を差すことが懸念された。12日(火)発表の結果としては、CPIは前年比2.7%上昇と予想の2.8%を少し下回った。これを受け9月のFRB利下げ期待が高まり、株価は上昇。S&P500は12日(火)から3日連続で史上最高値を更新した。しかし、14日(木)に発表された消費者物価に先行する米国生産者物価指数(PPI)が予想を上回る前月比+0.9%上昇(前月比で3年ぶりの高い伸び、前年比では+3.3%)となり、インフレ圧力が拡大。これが利下げ期待を一時的に後退させた。15日(金)には小幅な調整が入り、市場は利下げ期待を維持しつつも方向感を探る展開となったが、1週間としては、S&P 500+0.9%、ナスダック+0.8%と上昇基調を維持している。

米国株式市場の動き

各セクタのパフォーマンス
  • S&P 500+0.9%、ナスダック+0.8%と上昇基調を維持。CPIが予想を下回ったことにより、9月の利下げ期待が高まった。
  • コミュニケーション・サービスは、好決算によって作られたモメンタムに追随するかたちで+3.56%と躍進。META、T-mobile(TMUS)など好決算企業がセクタを牽引。また、Electronic Arts(EA)は、人気戦争ゲームシリーズの新作、Battlefield 6のベータ版オープンテストが好評で、株価が4.19%上昇した。
  • 一般消費財は、Amazon(AMZN)、ホームセンターのHome Depot(HD)、Lowe’s(LOW)がセクタの2.35%上昇を牽引した。Home Depot、Lowe’sの上昇は投資家が来週控える決算での好業績を期待していることの表われである。消費者は近年の高金利によりリノベーションなどの大規模修繕を控えているため、DIY需要が高まっている。
  • ヘルスケアは、+4.65%と大幅上昇した。ウォーレンバフェット、マイケルバリーなど名だたる投資家が、医療保険会社のUnited Health(UNH)の株を取得したことが公表され、多くの投資家が追随。UNHは一週間で+21.17%。この銘柄がセクター全体を牽引し、保険・医療サービス株に波及した。
  • 情報技術は、-0.08%とわずかに下落し、これまでの上昇が一服。半導体製造装置大手のApplied Materials(AMAT)とCISCO(CSCO)の決算発表での保守的な将来業績予測が全体のセンチメントに影響を与えた。AMAT CEOによると、保守的な業績予測は米国の関税政策や世界的な経済不安定性により、マクロ経済および政策の不確実性が増していることが要因。

7月の消費者物価指数(CPI)

インフレ指標である7月CPIが前年比+2.7%、前月比+0.2%と予想の前年比+2.8%をわずかに下回った。これにより、9月のFOMCでの0.25%の利下げ確率が90%以上に跳ね上がった。

CPI(青)とFRB政策金利(緑)

米国生産者物価指数(PPI)

  • 消費者物価に先行する米国生産者物価指数(PPI)が予想を上回る前月比+0.9%上昇(前月比で3年ぶりの高い伸び、前年比では+3.3%)となり、インフレ圧力が拡大。これが利下げ期待を一時的に後退させ、市場に不透明感をもたらした 。
  • 市場は9月の利下げ確率を100%から90%に引き下げた。 0.5%の大幅な利下げの可能性は低くなり、0.25%の利下げが主なシナリオとなっている。
PPIの月次変化率

注目の値動き銘柄

Intel (INTC)

• イベント:米政府による出資協議が報道され、株価が急騰
• 主な動き:トランプ大統領とIntel CEOの会談、政府による出資協議の報道、CHIPS法資金活用の可能性など、政策面での追い風が強まったことで投資家の注目を集める。
• 株価反応:週初19ドル台 から週末には24ドル台へ反発

Bullish (BLSH)

• イベント:8月13日に暗号資産取引所としてNYSEでIPO
• IPO価格:1株28〜31ドル → 初値は102ドル(約3.3倍)
• 背景:
ビットコイン・イーサリアムが高騰し、暗号資産市場が活況
ティール氏(PayPal創業者)が支援、ARKインベストが1.72億ドル購入
• 株価反応:IPO初日に+84%急騰

UnitedHealth Group (UNH)

• イベント:著名投資家による医療保険最大手UNHの大量株式取得が判明
• 主な動き:
バフェット氏のバークシャーが16億ドル分(500万株)取得
テッパー氏率いるAppaloosaも230万株買い増し
• 株価反応:8/15(金)に+11.98%急騰(304.01ドル)

UNH日足チャート

2025年8月第4週の米国株式市場展望

8月第4週の米国市場は、金融政策・景気指標・企業決算の三本柱が交錯する局面を迎える。週前半は住宅着工件数や建築許可件数などの定例指標が並び、米経済の底堅さと金利感応度の高いセクター(住宅・金融)への影響が注目される。21日(木)にはFOMC議事録とS&PグローバルPMI速報値が発表され、景気減速の兆候が強まれば利下げ期待が再燃する可能性がある。
週後半は、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長講演が最大の注目イベントとなる。ここで利下げ時期や政策スタンスに関する示唆があれば、株式市場は大きく反応し、ボラティリティが上昇する展開が予想される。
セクター別では、AI・半導体・小売・住宅関連が注目領域となる。企業決算ではウォルマート、Home Depot、Palo Alto Networksなどが予定されており、消費動向や価格戦略、AI投資の進捗が市場のセンチメントを左右する材料となる。特に小売企業は関税の影響を受けやすく、価格転嫁の成否が株価に直結する展開となるだろう。
全体として、8月第4週の米国株式市場は市場は高値圏での持ち合いが続くであろうが、イベントドリブンでのボラティリティ上昇に備えること求められる週となるだろう。

重要経済指標スケジュール

日付     発表内容・イベント
8/19(火) ・7月住宅着工件数(★★★☆)
      ・7月建設許可件数 (★★★☆)
8/20(水) ・Outlook-at-Risk(金融リスク見通し)(★★★☆)
8/21(木) ・FOMC議事録(7月分) (★★★☆)
      ・フィラデルフィア連銀製造業景況指数(8月) (★★★☆)
      ・S&Pグローバル景況指数速報値
      (製造業・サービス業、8月) (★★★☆)
8/22(金)  ・ジャクソンホール会議:パウエルFRB議長講演 (★★★★)
      ・米小売企業決算(ウォルマート)(★★★☆)

                 (★の数は株価への影響度の大きさ)

決算スケジュール

Earings Hubより

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