2025年9月第1週米国株式市場振り返り
9月1日週の米国株式市場は、8月雇用統計の予想を大きく下回る弱さが明らかになったことで、金利の引き下げ期待が高まる一方、景気減速への懸念も浮上し、不安定な展開とななった。S&P 500は週次で約0.3%の小幅上昇、ナスダックは1.1%の堅調な上昇を見せ、特にコミュニケーション・サービスが牽引。一方、エネルギー・金融などの景気敏感セクターは軟調で、金利低下は住宅・小型株に追い風となり、ラッセル2000は1%上昇。BroadcomやAlphabetなど好材料のあるハイテク株が買われ、投資家心理の改善も見られた。金利は債券相場で反落し、10年債利回りは今年以来の水準まで低下した。
各セクタの動き

• コミュニケーション・サービスセクタは、週間パフォーマンスで+2.96%。Alphabetの裁判勝訴による株価急騰がセクタ全体を牽引。Alphabetは、Webブラウザなどの独占禁止関連で米国司法省から提訴されていたが、Chromeブラウザを他社に売却せずに保持できる等のポジティブな判決となった。
• エネルギーセクタは、-3.35%と軟調。これは、需給悪化懸念と原油価格の下落のため。8月米雇用統計の悪化による原油需要減少予測とOPEC+の増産観測が重なり、需給バランスの緩みの懸念が拡大。原油はおおよそ3.3%下落し、エネルギー株に売り圧力がかかった。
• 金融セクタは、-1.7%。8月米雇用統計悪化で景気減速感が強まったことで、企業の信用リスクや貸倒リスクへの懸念が高まり、金融株にネガティブな影響を与えた。
8月雇用統計
9月5日に発表された8月の非農業部門雇用者数は+22,000人と予想(+75,000人)を大幅に下回り、失業率も4.3%と2021年以来の高水準に。弱い雇用データを受けて、トレーダーの間では年内3回の利下げが意識されるようになった。利下げ見通しの高まりと景気後退懸念により、米国国債の需要が増加。2年債利回りは3.5%、10年債は4.08%と低下した。株式市場では景気後退懸念の強まりにより、利益確定売りが出た。


半導体株パフォーマンス
半導体株の今週の主役はBroadcom。大きく上昇し、AI関連株の中でも圧倒的な存在感を示した。一方、NVIDIAとAMDは調整局面に入り、軟調な展開。
Broadcom (AVGO) は8〜10%前後の上昇となり、特に新たに約100億ドル規模のOpenAIからのAIアクセラレータ開発案件を獲得したことや、Q3決算でAI関連売上高が63%急増するなど、好材料が相次いだことが背景です。市場ではNVIDIAの牙城を崩す可能性のあるAI株として評価が高まり、さらなる成長期待が高まった。
NVIDIA (NVDA) は約2.7%下落。直近の決算ではデータセンター部門が予想を下回ったことや、すでに株価が今年30%超上昇している中、成長一服や過熱感への警戒が広がった。AMD はさらに大きく下落し、約6%超安。これは、NVIDIA同様、OpenAIが自社でAIチップを大量生産へ動いているとの報道により、外部への依存度が低下する可能性が浮上したことや、AI需要鈍化懸念が悪影響を及ぼした。
注目の個別銘柄
Alphabet (GOOGL)
• イベント:連邦裁判でChrome保持が認められる。
• 主な動き:独占解消リスク後退で安心感。
• 株価反応:週中に+11%と急騰、セクター牽引。
Lululemon Athletica (LULU)
• イベント:通年業績見通しの引き下げ(販売不振・関税負担)。
• 主な動き:下振れ懸念により売り圧力。
• 株価反応:−17〜19%の急落。
Tesla (TSLA)
• イベント:イーロン・マスク向け巨額報酬制度提案(最大1兆ドル規模)。
• 主な動き:CEOインセンティブへの注目。
• 株価反応:+3〜4%上昇。
翌週(2025年9月8日〜12日)の米国株式市場展望
来週のフォーカスは、CPI/PPIといった主要インフレ指標、そして企業決算。特に9月10日には卸売物価指数(PPI)、翌11日には消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、これらの結果がインフレ懸念やFRBの利下げスタンスに大きく影響する可能性がある。CPIの市場予測は前月比+0.3%、前年比約+2.9%で、市場予測通りなら、市場は政策金利の9月利下げの織り込みをさらに進める。成長株であるAI株が既に割高であることを考えると小型株・住宅関連への資金流入が継続すると予測される。予想より強いインフレデータであればむしろ金利反発・株価下振れリスクも。企業では、Oracle、Adobe、Krogerなど中〜大型株の決算が続き、特にテクノロジーや消費関連への影響が注目さる。投資家は、インフレ指標とテック株のボラティリティに注意を払いながら、ポジション調整を意識した慎重なスタンスが求められる。
重要経済指標スケジュール(9月8日〜)
日付 発表内容・イベント
9/10(水) ・8月卸売物価指数(PPI)
(★★☆☆)
・週次失業保険申請件数
(★★☆☆)
9/11(木) ・8月消費者物価指数(CPI)
(★★★★)
・コアCPI(★★★★)
9/12(金) ・ミシガン大学消費者信頼感速報
(★★☆☆)
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